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POSデータとは?基礎知識と仕組み

POSデータは、小売・流通業界において最も基本的かつ重要なデータ資産です。まずはその定義と仕組みを正しく理解しましょう。 

 

POSの意味とシステム構成

POSとは「Point Of Sales」の略で、日本語では「販売時点情報管理」と訳されます。つまり、商品が販売されたその瞬間の情報を記録・管理するシステムのことです。 一般的に、商品をレジに通し、バーコード(JANコード)をスキャナーで読み取った瞬間に、以下の処理が一瞬で行われます。 

  1. 商品価格の読み出しと合計金額の算出 
  2. 販売情報のデータベースへの記録 
  3. 在庫データの更新(減算処理) 

この一連の流れによって蓄積されるログデータが「POSデータ」です。これにより、店舗管理者はリアルタイムで売上状況を把握することが可能になります。

 

POSデータに含まれる具体的な情報(5W1H)

POSデータには、単に「いくら売れたか」だけでなく、マーケティングに不可欠な詳細情報が含まれています。主に以下の要素が記録されます。 

  • When(いつ):販売された日付、時間帯 
  • Where(どこで):店舗名、レジ番号 
  • What(なにが):商品名、JANコード、カテゴリー 
  • How much(いくらで):販売単価、値引き額 
  • How many(いくつ):販売数量 

 

これらのデータを集計することで、「どの店舗で、何曜日の何時に、どんな商品がいくら売れたのか」を正確に把握できます。これは経験や勘に頼らない店舗運営の第一歩となります。 

 

POSデータとID-POSデータの違い

近年、POSデータとセットで語られることが多いのが「ID-POSデータ」です。両者は似ていますが、決定的な違いがあります。 

 

「誰が」買ったかが分かるかどうかの違い

通常のPOSデータは「商品」に紐づいたデータです。「何が売れたか」は分かりますが、「誰が買ったか」は分かりません。 一方、ID-POSデータは、ポイントカードや会員アプリなどを通じて顧客IDを識別し、POSデータと紐付けたものです。これにより、POSデータの情報(いつ・どこで・何が)に加え、Who(誰が)という情報が付加されます。 

  • POSデータ:レシート単位の管理(ある客が何を買ったか) 
  • ID-POSデータ:顧客単位の管理(Aさんが過去に何を買い、今日何を買ったか) 

 

ID-POSで実現できる顧客ロイヤリティ分析

ID-POSを活用すると、リピート率や購入間隔、特定顧客の買い回り傾向などを分析できます。「30代女性のリピーターにはこの商品が人気」「この商品を買った人は3ヶ月後に離脱しやすい」といった、より深い顧客理解が可能になるため、CRM(顧客関係管理)やOne to OneマーケティングにおいてはID-POSが不可欠です。 

 

POSデータを活用する3つの大きなメリット

POSデータを収集するだけでは意味がありません。分析し、アクションにつなげることで初めて価値が生まれます。ここでは主なメリットを3つ挙げます。 

 

1. 売れ筋・死に筋商品の可視化と在庫最適化

最大のメリットは、商品のパフォーマンスが数値で明確になることです。 感覚的に「売れている」と思っていた商品が実は利益率が低かったり、逆に地味な商品が安定して売れ続けていたりといった事実を発見できます。これにより、「売れ筋商品」の在庫を厚くして機会損失を防ぎ、「死に筋商品」のカットや値下げを行うことで、在庫回転率を高め、キャッシュフローを改善できます。 

 

2. キャンペーンや販促施策の効果測定

チラシ配布、ポイント倍増キャンペーン、エンド陳列(棚の端での特設陳列)などの販促施策を行った際、その効果を定量的に測定できます。 「施策期間中に該当商品の売上が前週比でどれだけ伸びたか」「併売率は上がったか」などをPOSデータで検証することで、施策の良し悪しを判断し、次回のプランニング(PDCAサイクル)に活かすことができます。 

 

3. オペレーションの効率化とレジ業務の改善

時間帯別の売上データや客数データを見ることで、スタッフのシフト配置を最適化できます。 例えば、「平日17時〜19時に客数が急増する」というデータがあれば、その時間帯だけレジ担当を増やすことで、レジ待ちの行列を解消し、顧客満足度を向上させることができます。逆に暇な時間帯の人員を減らすことで、人件費の適正化も図れます。 

 

すぐに使える!POSデータの代表的な分析手法5選

POSデータがあれば、ExcelやBIツールを使って様々な分析が可能です。ここでは頻繁に使われる代表的なフレームワークを紹介します。 

 

ABC分析(重点分析)

「パレートの法則(20:80の法則)」に基づき、商品を売上高や利益額の高い順に並べ、A・B・Cの3つのランクに分類する手法です。 

  • Aランク(累積構成比70%程度):主力商品。絶対に欠品させてはいけない。 
  • Bランク(累積構成比70〜90%程度):準主力商品。Aランクへの昇格を目指す。 
  • Cランク(累積構成比90〜100%):死に筋商品。取り扱い停止や入れ替えを検討。 

これにより、管理すべき重点商品を明確にします。 

 

バスケット分析(併売分析)

「一緒に買われている商品は何か」を分析する手法です。「マーケットバスケット分析」とも呼ばれます。 有名な「おむつとビール」の事例のように、一見無関係に見える商品同士の相関関係を見つけ出します。 この分析結果をもとに、相性の良い商品を近くに陳列したり(クロスマーチャンダイジング)、セット販売を行ったりすることで、客単価の向上(アップセル・クロスセル)を狙います。 

 

トレンド分析(時系列分析)

日別、週別、月別、季節別などで売上の推移を追う分析です。 「毎年夏に急激に売れる商品」「給料日後に売れる高単価商品」などの季節変動やトレンドを把握することで、早期の発注や売り場作りの準備が可能になります。また、昨対比(昨年対比)を見ることで、店舗の成長率を測る指標にもなります。 

 

Zチャート分析

「月次売上」「売上累計」「移動年計」の3つの指標を折れ線グラフにし、その形状が「Z」の字になることから名付けられた分析手法です。 短期的な変動に惑わされず、長期的な売上傾向(上昇トレンドか、衰退トレンドか)を判断するのに適しています。 

 

デシル分析(ID-POS活用)

顧客を購入金額順に並べ、10等分(デシル)してグループ化する手法です。 「上位10%の顧客グループが売上全体の何%を占めているか」を把握できます。上位顧客(優良顧客)に対して特別なDMを送るなど、効率的なマーケティング施策を打つ際に有効です。 

 

POSデータの限界と分析時の注意点

万能に見えるPOSデータですが、実は見えない部分(限界)も存在します。ここを理解していないと、データ分析の罠に陥る可能性があります。 

 

「なぜ」売れたのか・売れなかったのかは分からない

POSデータはあくまで「結果」のデータです。 例えば、ある商品の売上が落ちた場合、POSデータでは「売上が落ちた事実」は分かりますが、その理由までは教えてくれません。 「競合店がセールをしていたから」なのか、「気温が急に下がったから」なのか、「パッケージが不評だったから」なのか。この「理由(Why)」を突き止めるには、POSデータ以外の定性情報や外部データが必要です。 

 

売り場の状況(欠品・陳列乱れ)との乖離

POSデータで最も注意すべきなのが、「売れなかった(データなし)」=「需要がない」とは限らない点です。 もし、売り場で商品が欠品していたらどうでしょうか?需要があっても買えないため、POSデータ上は売上ゼロになります。これを「需要がない」と判断して発注を止めると、大きな機会損失になります。 また、陳列が乱れていて商品が見つけにくかった場合も同様です。 POSデータには「売り場の状態」は記録されません。正確な分析を行うためには、実際に店舗に足を運び、売り場のメンテナンス状況や在庫状況を目視で確認する活動(ストアコンパリゾンや店頭調査)を組み合わせることが重要です。 

 

まずはPOSシステムからデータをCSV形式などで抽出できる環境が必要です。分析にはExcelが最も手軽ですが、データ量が膨大な場合はBIツール(Tableau、Power BIなど)の導入を検討すると効率的です。

はい、非常に有効です。小規模店舗こそ、限られたスペースと資金を最大限に活かすために、ABC分析などで在庫の質を高める必要があります。感覚に頼らない経営が生存率を高めます。

JANコード(バーコード)は商品を識別するための世界共通のコードです。POSシステムはJANコードを読み取ることで商品を特定し、価格や商品名を参照します。したがって、JANコードの登録が正確に行われていることがPOSデータ分析の前提となります

購入に至らなかった来店客の行動(非購買データ)、顧客の感情や購入動機、そして「棚に商品があったかどうか(欠品による機会損失)」などです。これらはカメラ分析や店頭調査などで補完する必要があります。

まとめ

本記事では、POSデータの定義から具体的な分析手法、活用のメリットについて解説しました。 

  • POSデータは「販売時点」の情報を記録し、5W1Hを可視化する。 
  • ID-POSと組み合わせることで、「誰が」買ったかという顧客分析が可能になる。 
  • ABC分析バスケット分析を活用することで、在庫最適化や客単価アップが図れる。 

ただし、POSデータは「結果」であり、「売り場の状態」や「顧客心理」までは見えないため、現場の確認とセットで考えることが重要。 

データは集めるだけでなく、分析して現場のアクションに変えてこそ価値があります。まずは自社のPOSデータを見て、売れ筋商品の傾向を掴むところから始めてみてはいかがでしょうか。 もし、データの活用方法や、データと現場のギャップにお悩みの際は、ぜひ専門家にご相談ください。 

 

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